そばの発祥


そばは、タデ科のそば属に属する一年生の草木植物です。

原産地は従来、中央アジアから東アジアの北部(寒帯地域をのぞく)、特にバイカル湖、中国東北区、およびアムール川一帯にわたる地域といわれてきました。

ところが最近、京都大学の大西近江助教授が、中国・雲南省の永勝県で、そばの野生祖先種を発見し、そばの原産地は中国南部説が有力になっています。


日本へのそば伝来


そばの日本伝来は、中国から導入されたものとする説が多いでが、その時期については明確には分かりません。

しかし、わが国に最も古く伝来した穀類として稗(ひえ)・シコクキビ・粟(あわ)・黍(きび)・蕎麦(そば)・稲(いね)の六つの作物をあげ、約3500年前の縄文末期に伝来したとする説があります。

埼玉県の真福寺貝塚の泥灰層の遺跡からはうり類・小豆・ゴマなどと同時にそば粒も見つけられています。そのほか、長野県の野尻湖、青森県南津軽の発掘調査など、全国で10ヶ所余りの遺跡で他の作物種子と共にそばが発見されたことが報告されています。

史料的に現在、最古のものは、「続日本記(しょくにほんぎ)」巻九の、第44代元正天皇の養老6年(722年)に発せいられた勧農の詔(みことのり)であると思われます。

<今年の夏は雨がなく、田の稲が実らないので、役人が農民に晩禾・蕎麦及び大小麦を作り凶作に備えるようにすすめた>

このように、すでにこの時代に農民が救荒作物として、そばを栽培していたのは確かなようです。


そばの麺、発祥


そばが、麺として食べられるようのなったのは、いつ頃からだったのでしょうか。そば切りの発祥地として、従来二つの説があります。

信州説
1645年に刊行された書物の中に「そば切りは信濃国の名物。当国よりはじまる。」と言う記述があります。
甲州説
1704年頃に書かれた書物の中に「そば切りは甲州よりはじまる。」と言う記述があります。

このほかに、大坂(大阪)発祥説、京都発祥説もあり、現在では、何処が本当の発祥地か解る由もありません。  しかし、1650年には江戸の町でそば切りが普及し始めているため、少なくとも今から400年以上前にはそば切りは考案されていたと考えられます。


そばの品種


植物としては、大きく三つに分けられます。

野生種の宿根そば 明治時代、薬草として輸入され、植物園や薬草園で見かけることがあります。 このそばは、多年草なので放っておくと、どんどん増えていきます。
ダッタンソバ 苦ソバともいい、苦味が強く、茹でると釜の湯が黄色になります。 中国やネパールで栽培されており、食用や飼料にされています。 ルチン等の含有量が多く、薬用や健康食として近年、乾麺等として商品化されています。
普通そば 日本で普段食べられている「おそば」の原料です。
参照 普通蕎麦の品種

普通そばの品種


そばの品種はもともとは「在来種」とも呼ばれ、そばの産地では必ずと言っていいほど存在します。しかし、その土地で古くから作られている物で、品種名の無いものが大変に多く、種子更新をしないで小粒化しているのが現状です。

その中で主力産地では、優良品種の育成に勉め良質の玄そばを生産しています。 種苗法で登録されているものが10品種あります。「高嶺ルビー」などネパール在来種から育成された観賞用固定品種もあります。

また、在来種の中にもその土地に適した優良品種といってもいいものが存在します。

【品種/在来種分布図】

みやざきおおつぶと信濃大そばは生産性の向上を目指して研究開発されたが、大味という難点があり、現在ではあまり栽培されていません。


そば粉の製粉の歴史


小麦粉などと同じ様に、そば粉は、昔は石でたたいたり、臼でついて粉にしました。

石臼の考案により量産が可能になり、長い間利用されてきました。

その後、ロール式製粉機の登場により、製粉時間の大幅な短縮により飛躍的に生産能率があがりました。また、石臼では正確には出来ない、打粉、さらしな、何番粉、などを正確に取り分けることが出来るようになりました。

しかし、ロール式製粉機は高速回転で製粉するため、そば粉本来の風味が損なわれ、そば粉の味を保つことが難しく、最近ではまた、石臼挽き製粉をする所が増えています。


石臼挽きそば粉の美味しさ


そば粉はロール製粉機より石臼で挽いたもののが美味しいと言われています。 元・同志社大学工学博士 三輪茂雄教授によると、石臼挽きそば粉が美味しいのには幾つかの理由があるそうです。

石臼の回転速度は外側で秒速0.5〜1m、中央部ではこれよりはるかに遅くなります。これに対しロール製粉機は100倍近い速度になります。粉砕物にかかる粉砕エネルギーは速度の2乗に比例し、石臼の10000倍近いエネルギーが発生します。殻粒が割れるのに必要なエネルギーは実質上その1%以下で、後は歪エネルギーとして殻粒の局部に著しい高熱を発するため粉焼けを起こしてしまいます。 また、石臼は石臼面に閉じ込めた状態で粉砕するため香りが飛びにくいと考えられます。ほかにも石臼には粉砕と同時に粉を擦り、練るブランディング効果や石臼の溝は通気性が良く熱がこもるのを防ぐ効果もあると言われます。 このことが、石臼挽きそば粉が美味しいといわれる理由と考えられます。


そば粉の出来るまで


玄そばは、麻袋(輸入物50s・国内産45s)又は紙袋(22.5s)で入荷します。

この中には、ゴミ、ほこり、石等が混入し、実の表面には土よごれなども付着しているため、それらを取り除きながら製粉していきます。

製粉工程で一番手間がかかるのは精選、抜きの工程です。ここをしっかりやらないと真っ黒い砂利つく不衛生な粉ができてしまいます。

下記のような工程でそば粉が出来ます。

1 精選工程 セパレーターによるゴミ・石取り 研磨機で外皮(そばがら)の磨き
ブラシマシンで外皮のほこりを払う 石抜機による小石取り
2 抜工程 精選された玄そばを数種類の大きさに篩分けする
篩分けした玄そばを大きさ別に脱皮機にかけ、実と殻に分ける
3 製粉工程 選別された実を石臼で製粉し、篩を通す
ロール製粉機で製粉する場合は、用途により取り分ける
4 袋詰工程 製粉された粉を袋詰機にいれ、 粉が均一になるように攪拌(かくはん)し、紙袋に詰める。

黒いそば粉と白いそば粉


現在のそば粉は、色の白い粉が多いのですが、これは製粉する前に殻を丁寧に取り除き実だけを製粉機に入れるためです。

製粉技術の未熟な頃や、精選、抜き、篩機械を持たない普通の家では、殻のあまり取れていない状態や、殻のついた状態で製粉したので、黒いそば粉になってしまいました。 そのため現在でもそば粉は黒いものと思っている人が大勢いるようです。

※黒いそば粉が香りが強いということはありません。そば殻にはそばの風味はありません。

そば殻は、昔から頭を冷やすと言われ枕に良くつかわれました。最近ではさまざまな素材が出回って需要が減っています。そば殻の枕もいいものです。一度お使いになってみてください。


そばの栄養


たんぱく質 たんぱく質はアミノ酸に分解され身体に吸収されます。そばにはそのなかでも人体に不可欠か必須アミノ酸を多く含んでいます。
メチニオン 強肝作用
スレオニ
シスチン
基礎体力
アルギニン スタミナドリンクに取り入れられている。
ビタミンB1
ビタミンB2 
米、うどん、ラーメンと比較すると多く含まれる。
カリウム
鉄分
ナイアシン
他の穀物より多く含んでいます。
ルチン そばにはビタミンCがほとんど含まれていません。そのため大根おろしなどと一緒に食べると良いと言われます。しかもルチンはビタミンCにより効果をいっそう高めてくれます。ルチンは毛細血管を強くし、脳出血の予防する物質として医療現場でも使われています。 (ルチンは水溶性のため4割はそば湯に溶けてしまうためそば湯も飲むことをお勧めします。)
コリン 肝臓機能の増強 脂肪肝、肝硬変の予防。

国内産蕎麦の産地別収穫量


※国内における玄そば消費量は年間120,000t前後と言われています

平成14年度全国玄そば収穫量
1位 北海道 10,500t
2位 福島県 2,550t
3位 長野県 2,210t
4位 鹿児島 1,510t
5位 茨城県 1,310t
6位 栃木県 1,210t
7位 秋田県 925t
8位 新潟県 708t
9位 岩手県 577t
10位 山形県 538t

国内全体の収穫量 25,438t

平成15年度全国玄そば収穫量
1位 北海道 11,100t
2位 茨城県 2,250t
3位 長野県 1,860t
4位 福島県 1,800t
5位 栃木県 1,550t
6位 鹿児島 1,240t
7位 福井県 1,200t
8位 山形県 1,180t
9位 秋田県 1,060t
10位 新潟県 534t

国内全体の収穫量 26,800t


麺類用そば粉都道府県別使用量


平成13年度 麺類用そば粉都道府県別使用量
生麺類 乾麺類 合計
1位 長野県 2,196t 6,891t 9,087t
2位 新潟県 1,483t 976t 2,459t
3位 埼玉県 1,911t 84t 1,995t
4位 山形県 469t 1,470t 1,939t
5位 北海道 1,349t 538t 1,887t
6位 東京都 1,624t - 1,624t
7位 大阪府 1,597t 0 1,597t
8位 兵庫県 869t 674t 1,543t
9位 静岡県 1,418t 84t 1,502t
10位 愛知県 1,305t 189t 1,494t
合計 全国合計 28,291t 16,375t 44,666t

◇このデータはあくまで各都道府県で「麺の製造に使われるそば粉使用量」です。

※そば料理、菓子、即席めん類などは含まれていません。

◇「玄そば」、「そば粉」の県別の生産量、使用量の総数ではありません。


国別玄そば収穫量と輸入量


そばの世界各国年度別収穫高
国名 2002年 2003年 2004年 過去5年平均
1位 中国 968,000 1,340,000 1,500,000 1,401,600t
2位 ロシア 302,480 525,350 580,000 595,958t
3位 ウクライナ 209,000 311,000 430,000 363,720t
4位 フランス 80,788 101,729 70,000 69,665t
5位 アメリカ 65,000 65,000 65,000 65,000t
6位 ポーランド 40,042 44,068 59,050 55,041t
7位 ブラジル 48,000 48,000 48,000 48,800t
8位 カザフスタン 29,647 30,000 24,000 31,449t
9位 日本 25,400 26,800 ----- 26,700t
10位 リトアニア 10,600 14,700 15,000 13,560t
11位 カナダ 12,200 9,900 10,000 12,400t
世界生産高 合計 1,817,064 2,552,119 ------ 2,718,069t
国別輸入数量シェア(平成15年度)

国内消費量の70%近くを輸入でまかなっています。

※参考資料:全国蕎麦製粉協同組合/農林水産庁/横浜税関